ソーシャルゲームを「ゲーム」と呼びたくない理由 (「ソーシャルゲームのすごい仕組み」 - まつもとあつし)

ソーシャルゲームのすごい仕組み」を読んだので簡単に感想を。一応自称ゲーマーの僕ですが、従来のテレビゲームとソーシャルゲームってそもそもどう違うんだっけ、についてうまく表現できませんでした。この本ではその辺りの違いについてうまく書かれていてとても面白かったです。

ざっくり言うと

作者のまつもとさんはTCGトレーディングカードゲーム)好きで、どちらかと言うとソーシャルゲームがあまり好きじゃないなのかもなぁ。ちなみに、僕はそうです。マジックザギャザリングのカードとかまだたまに買います。

ざっくり言うと以下の感じの内容。

従来のゲームとソーシャルゲームの本質的な違い、それこそがタイトルの「すごい仕組み」なわけですが、

  1. ミッションの達成
  2. 物語性の分離
  3. ネットワークを介した育成/対戦

と言うような「ゲームの楽しさが蒸留されたもの」を取り出して、「基本無料/アイテム課金」と言う従来のゲームとは根本的に異なるビジネスモデルを成立させているところ、だと書かれています。

ちなみにここで「蒸留された」と書かれているものこそ、いわゆる「ゲーミフィケーション」と呼ばれるものなんでしょうね。言わばソーシャルゲームは「ゲーミフィケーションのかたまりである」と言うことか。

結果論のような気もするけど、確かにそうだと思う。考えてみるとソーシャルゲーム以前にも基本無料のアイテム課金モデルはMMO(=大規模なオンラインゲーム)とかにも存在したけど、それはある程度性能の高いPCが主なプラットフォームで、コアなユーザの間でしか成立してなかったんだなぁ。ケータイやスマートフォンのような誰でも持っている端末で簡単に出来る敷居の低さも、このソーシャルゲームのソーシャル感に大きな役割を担っていると思う。(リアルな自分の友達たくさんと一緒に簡単に始められて、いつでもどこでもすぐに繋がれる辺り、MMOとは根本的に違っている)

ソーシャルゲームを「ゲーム」と呼びたくない理由

この本に限らず、ソーシャルゲームは従来のゲームの延長上にあるものだとよく語られる。確かにこの本にも書かれているように、従来のゲームを礎としてそこで培われたゲームの「仕組み」がソーシャルゲームには確実に活かされているはずだし、それは間違いないとは思う。でも僕自身ソーシャルゲームを「ゲーム」と呼ぶことに対してとても違和感があったんだけど、この本を読んで少し納得が出来ました。

僕が感じていた違和感、それはものすごく簡単に言うと「ソーシャルゲームはほとんど思考しなくていい(頑張らなくていい)」からだと思う。別にソーシャルゲームを非難したいわけでも、特別嫌いなわけでもないんですが。僕も人並みに(数十時間くらいは)ソーシャルゲームと呼ばれるものをやってみたことはあります。なんとかロワイヤルとか、なんとかコレクションとか。

上に書いたゲーミフィケーションを取り出しただけのものって、実は「ゲーム」っぽいものだけど、設定されたゴールに向けてプレイヤーの努力の必然性はないんですよね。ソーシャルゲームってほんとに誰でも出来るように設計されていて。だからこそケータイを持っている人なら誰でも出来るし、小学生くらいの子どもから40代50代までプレイされているのだと思います。

ただそれって、あまり考えずにボタンを押し続けるだけで達成感が得られるもの、身も蓋も無い言い方をすると「プチプチ」に近いと思う。プチプチって言うのは梱包材とかのアレです。プチプチして全部つぶせるとすばらしく達成感を得られるあいつ。

含まれている「達成感」要素はゲーミフィケーションのそれと同じだと思うけど、それってゲームなのか…?と思ってしまうんですよね。確かにコンシューマゲーム市場(据え置き/携帯機どちらも)は確実に縮小傾向にあるのでしょう。それにはソーシャルゲームの影響も少なからずあるのだとは思う。ただそれって「テレビゲームが面白くなくなってきた」と言うより「プチプチで満足する人が増えてきた」と言う人の変化もとても大きいような気がしてます。(今までゲームをやらなかった層も、ソーシャルゲームをしていると思いますが。)

こういうことを言うこと自体、もはや「古い世代のゲーマー」なのかもなぁ。それでもやっぱりソーシャルゲームは面白いと思わないし、昔のゲームの延長上にあるものをやりたいと思います。三国志12が酷評されてますが、それでもこっちの方がずっと面白い。だって、かなり頑張らないと上級モードで孔融で天下統一とか出来ないし…そういうところが「ゲーム」なんだと思います。まる。


「そこで得られる体験、ゲーム性、あるいはのめり込んでしまう中毒性はきわめてゲーム的なのだ。むしろ、その部分だけを切り出し、余計な要素を排除したものということもできるだろう。」 - 著者

ソーシャルゲームのすごい仕組み (アスキー新書)

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